『一雨等潤』
草木が湿っぽく香る空気を感じさせる気候、そろそろ入梅目前。
お釈迦様の教えに、三草二木の喩え話があります。
このすべての世界の山や川や谷などの地には、いろいろな草や木が生い茂っており、そ
の種類は多く、名前も姿もそれぞれ異なっています。
そこに空いっぱいに雲が広がり、雨を降らします。
その雨は平等にあまねく降りそそぎ、草木を潤しますが、草にも大、中、小、異なりが
あり〈三草〉、木にも大木、小木〈二木〉があります。みなそれぞれの大きさにしたが
って潤い、生長し、花を咲かせ、実を結びます。
これらの草や木は、同じ一つの大地に生え、一つの雨の潤す(一雨等潤)ところであり
ますが、同じ雨を受けても、草木はそれぞれの大きさや性質によって異なりがみられる
のです。
この三草二木は、いずれも仏さまの教えを受けるひとびと〈衆生〉をたとえられたも
ので、この草木にあまねく降りそそぐ平等の雨が、一乗の教え、すなわち、すべての者
が仏になる教えを指しています。仏さまがこの世に出現されることが、大雲がわき起こ
ると表現され、大きな雲があまねく全世界を覆うように、仏さまの慈悲のこころが全世
界のひとびとを覆い尽くし、等しく一切を仏となす教えがそそがれていくのです。
分け隔てのない仏の大慈悲を雨に喩えられた、お釈迦様の教えです。